芝浦工大原田研のゼミ「SHU-MAI」に潜入。建築と他領域を横断した伝統の活動をレポート!

2024年5月21日

芝浦工業大学建築学部・原田真宏研究室の学部4年生が前期に行っている伝統的なゼミ活動「SHU-MAI」に潜入してきた。建築学生界隈では、「しゅーまい」「SHU-MAI」「シューマイ」など様々な表記でいろいろな大学でなされている試みとして知られている。

名前からは実態がつかめないゼミ活動であるが、今回は潜入取材をもとにこの活動について紹介する。

他大の活動が気になっている建築学生や、芝浦工業大学に入学を検討している高校生などに読んでいただきたい。

 

SHU-MAIとは?


 

はじめて聞いた人にとっては、「シューマイ?崎陽軒で有名なヤツ?」となるかもしれないが、毎週やるから「まい・しゅう」を逆転させて「しゅー・まい」というわけだ。

原田研究室でのSHU-MAIの歴史がスタートしたのは2009年4月。今年度で15年目を迎える。2024年度第4回「文華」で通算152回にもおよぶ歴史あるゼミ活動である。

内容は、週に1個のテーマが与えられ、それに対して模型を使って表現する。テーマもゼミ生が考案し、教授である原田先生は一切関与しない。いわば「自主ゼミ」なのだ。

 

たとえば、2014年の第57回では「平和」というテーマのもと制作・議論を行った。このころ、日本で集団的自衛権行使の容認が閣議決定された時期でもある。

 

このように、ゼミ生自身が課題テーマを考案するやりかたのおかげで、時事ネタ・ニュース・メンバーの思想や生活がダイレクトに反映される。

 

 

ゼミ前の様子


 

芝浦工業大学豊洲キャンパス

芝浦工業大学豊洲キャンパスの

本部棟9階でゼミは開催される。

写真:筆者撮影

 

SHUMAI 芝浦工業大学 原田研究室

芝浦の4年生はひとりあたりサブロク版ほどの

作業スペースが与えられる。

写真はゼミ直前までプレゼン資料の

作成に追われるメンバーの様子。

写真:筆者撮影

 

モデルチェンジした2024年度SHU-MAI


 

CURIOATE編集部でも活動し、今年のSHU-MAI係となった半田洋久さん細田雅人さんは今までのレギュレーションの良いポイントを維持しながら、新しい要素を加えてゼミの内容をアップデートした。

 

2人は、15年も続く活動に対して「なぜ取り組むのか」「どう取り組むのか」を再考するべきだと考えたそう。たしかに、SHU-MAIはこれといったマニュアルが先輩から引き継がれるわけでもなく、「先輩たちはあんな風にやっていたな」という記憶のみを頼りに受け継がれてきたため、模型表現からの議論というのも形式のみが一人歩きしていた。

 

そこで、SHU-MAI係は卒業制作で読書量が増加することに着目し、「本」を題材にしたのだ。今年のメンバーは9名いて、合計9回のゼミをこなせば81冊の本に触れられるというわけだ。そして、「SHU-MAI文庫」というタイトルでスタートさせた。

 

本を題材にしたことで、思いもよらない効果があった。建築学生の設計は、レファレンスの量がゆえにどうしても個人の感想になってしまいがちである。

たとえば、美術館を設計する課題でよく目にするのが「美術館は崇高なイメージがあって、多くの人は入りにくさを感じているはずです。だから私は誰でも入ってみたくなる美術館を設計しました!」のような作品だ。こういった主観的なコンセプトで設計されたものは設計課題で評価されても卒業設計では評価されないだろう。「美術館に崇高なイメージがある」というのは、その人の感想でしかなく説得力がない。ゆえに共感を得られない。設計の審査委員たちはきっと美術館に崇高なイメージなんて持っていないだろう。

 

ただ、同じコンセプトでも説得力を獲得できる方法がある。それは【定量的なデータ】や、【影響力のある人の発言】だ。これらは、過去の論文や著書からレファレンスするのが定石である。SHU-MAI文庫は、本を題材にすることによってゼミ生全員の共感を得やすく、個人の感想で議論する「ムダ」が消え去ったのだという。

 

SHU-MAI文庫 原田 芝浦工業大学

SHU-MAI文庫のフライヤー

写真:筆者撮影

 

 

第4回「文華」


 

そして今回のテーマは「文華」。出題者の鈴木創さんは、資本主義社会において文化予算が削減されている事実に問題を提起し、ムダとされている「利潤をもたらさない営み」について考える必要があると感じていたそう。特に、そのムーブメントは欧州で顕著である。

イタリアでは、オペラハウス・スカラ座に対する政府からの補助金がカットされた影響で約7億3000万円の資金難に直面した。このような現状をうけて、多くの活動家が抗議している。

 

また、「文化」ではなく「文華」にした理由は、岡倉天心を引用しながら、「花を贈る、絵を描いて贈る、のような生物として生きる上では絶対に必要ではないひと手間に目を向けた瞬間に文化や芸術が華ひらく」ことから華という文字を使った。

 

SHUMAI_原田研究室 SHU-MAI文庫

写真:筆者撮影

 

ゼミは本部棟9Fのラウンジスペースにテーブルとディスプレイを準備して18:00からスタートした。今回は、原田研究室からは8名(1人病欠)、他研究室から1名が参加。参加できるのは原田研究室のメンバーのみではなく、他の研究室や他学からの参加も募っている。また、ゼミに作品を提出した9名のほかに、10名の観覧者が訪れていた。このように、門戸を開いているのも今年度SHU-MAI文庫の特徴のひとつである。

また、教授が関与していないため気軽に参加できるような環境なのもグッドポイントだ。

 

SHUMAI_原田研究室 SHU-MAI文庫

熱心にメモをとる観覧者。

写真:筆者撮影

 

 

今回のテーマ「文華」で発表された作品や、出題者による総評は原田研究室公式ブログをご覧いただきたい。

 

第151回「文化」(原田研究室ゼミ活動「SHU-MAI」HP)

 

また、SHU-MAIに関する告知や写真などは原田研究室公式Instagramからチェックできる。

 

原田研究室公式Instagramはこちら!

 

 

独占インタビュー


 

今回の出題者である鈴木創さん、SHU-MAI係の半田さん、細田さんにインタビューを行った。インタビューの様子はCURIOATEの公式Instagramのリールにポストしているので、是非そちらもチェックしていただきたい。

 

CURIOATE公式Instagramはこちら!

 

鈴木創さん

 

半田洋久さん

 

細田雅人さん

上から鈴木創さん、半田洋久さん、細田雅人さん。

写真:筆者撮影

 

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