【イベントアフタートーク #1】オープンアトリエを終えて、2人の素顔に迫る。【Gakki3×曾原翔太郎】
2023年12月11日
8月19日、とある場所でアトリエのオープン記念したイベントが開催された。
2022年12月、巨大な工場の一部空間の活用募集が「アトリエ賃貸プロジェクト」から行われました。そこに2組のクリエーターが集い、Id108 /イドイチマルハチとIOI/Idea Of Independence という二つのプロジェクトがスタート。この場所のバックストーリーとこれから生まれてゆく物を伝えるべく、Id108のコンセプトに加え、入居する2組のクリエイターが展開する「キンミライガッキ現代支部」と、「Garmentekhne」の活動を紹介するという目的の展示企画という経緯だそうです。
オープンアトリエ終了につき、イベント開催に至る経緯や苦悩、その裏側を2人の対談を通して深掘りしました。
photo : Yuki Nasuno
対談 :
Gakki3(以下 Gakki)
キンミライガッキ現代支部 代表代行。2018年以降、フリーランスとしてのコラボレーション活動も活発に行っている。CNCや3Dプリンターといったファブリケーションと、工作機械類を用いた小工場的ものづくりを組み合わせ、自他問わぬ制作業務を行う。別時空の楽器「キンミライガッキ」を取扱う時間渡航者の楽器ブランド「キンミライガッキ現代支部」の代表代行も務める。この時代の音楽史に捉われない楽器=キンミライガッキの販売やアートプロジェクト、ライブパフォーマンスと活動は多岐にわたっている。
曾原翔太郎(以下 曾原)
1999年生まれ。Garmentekhneディレクター。CURIOATE共同代表。インテリアデザイナー。3Dグラフィックデザイナー。芝浦工業大学建築学部を2023年に卒業し、その後学部卒後フリーランスとして活動。デザインには得意としている数学を用いることが多く、過去には木質繊維素材MDFを使った衣服や、三角関数をかけられたハニカム構造によってデザインされたスタンディングテーブルを実作している。DJとしての顔も持ち、MUSIC&BAR enabにて、様々なイベントに出演。
モデレーター : 半田洋久(以下 半田)
2002年生まれ。芝浦工業大学 建築学部 在学中。WebマガジンCURIOATE(キュリオエイト)編集部ライター。数々のコンペに参加しながら、風景、コモンズ、アーカイブの3つのキーワードをもとに、横断的に建築を記述することを模索している。
半田 : 本日はオープンアトリエ後に対談ということでモデレーターを務めさせていただきます。半田洋久です、よろしくお願いします。
左から順に曾原翔太郎、Gakki3、半田洋久
半田 : 当日私はオープンアトリエでスタッフとして当日関わらせてもらいましたが、せっかくなので、そのきっかけみたいな前段部分から深掘りしていきたいなと思います。
バックボーンの違う2人が同じアトリエに集まる
半田 : 最初はまずお二人の活動の内容について伺っていきたいな。曾原さんは僕がよく知ってますけれども、Gakkiさんはまだ何も詳しくは存じ上げないので、お二人の活動から聞いてみたいなと思います。ではまず曾原さんから。
曾原 : 僕がメインで活動してるのが、今はGarmentekhne(ガーメンテクネ)っていうデザインスタジオをやっていて、そこでグラフィックと家具のデザインっていうのをやってます。最近は建築のプロジェクトも増えてきて、インテリア内装のデザインなんかもやってます。
半田 : Garmentekhneは、学部時代に既に設立されていましたよね。
曾原 : そうですね、学部3年の時に、僕が大学1年生ぐらいのときから通っていたBarLIBREっていう池袋にある世界的なバーがあって、そこから家具の制作をしてくれないかっていう依頼が学部3年のときにあって、そこから個人の仕事っていうのを、学生の学業とは別に始めていました。
半田 : 早い独立でしたよね。
曾原 : いや、まぁ(照)。それとVUILDっていう建築テック集団があるのですが、そこで長期インターンを始めたのもちょうど学部3年の時で、VUILDが業務委託っていう形でインターンを雇っていたので、その時期に税務管理なんかをしないといけないっていうので、開業をするにはいいんじゃないかなと思って、そのタイミングで独立させていただきました。
Garmentekhne 公式サイトより引用
半田 : ありがとうございます。Gakkiさんはどんな活動をされているのですか。
Gakki : 私はそうですね。結構お二人とは全然違っていて、建築というバックボーンではなくて、平たく言うとモノづくりと音楽かなと思うんですけれども、今はキンミライガッキっていうアートプロジェクトのディレクションみたいなこととか、実際のフロントとして立ってモノを作ったりっていうことをやってるんですけれども、アートプロジェクトとして新しい楽器を作ったり発明したりして、それを実際演奏するとか、展示するみたいなことと、あとはフリーランスの仕事として何かの広告案件向けにちょっと不思議なメカを作ったりとか、あとは色んな動く装置、どこに頼んでいいか分からないようなちょっと不思議な装置を作る、そんなプロダクト作りをしています。
キンミライガッキ ゲンダイシブ 公式サイトより引用
半田 : 演奏の楽器作りの他に、ライブパフォーマンスもされていますよね。
Gakki : そうですね。ちょうどこのレセプションパーティーの時にもやらせていただいたんですけれども、作った楽器の中に機械を制御して自動で演奏できるものを作ってまして、「自動演奏」って言うとオルゴールとかがあると思いますけれども、うちは例えばMIDI信号使って制御できる、だけど、その制御できる楽器がモーターとかで動いてたりとか、人工筋肉で動くみたいなかなり特殊なことをやっています(笑)。
場所と共にあった出会い
半田 : ありがとうございます。お二人は全く違ったバックボーンを持っているんだけれども、一つのアトリエに集まってモノ作りをしてるのがすごく面白いなと思います。その辺は後ほど深ぼっていこうかと思います。あと、お二人が出会った経緯についても伺ってよいですか。
曾原 : 出会った経緯っていうのは、ここに住み始めたからですね。今日今撮影しているこのスタジオがあるId108というクリエーティブベースメントは、オーナーが赤羽冶金という電熱線なんかを作ってる工場なんです。そこが出してるビンテージ団地みたいなのがあって、そこの入居を募集してるワクワク賃貸っていうサイトを僕が見つけたという感じです。その時ちょうど僕が大学を出て、自分でモノ作りする上で工具とかを使えるような、音を出せる空間というのを探してて、suumoとかよくある不動産サイトだと、そういった物件ていうのが全然なくて。どんどん深堀っていたらワクワク賃貸の記事に出会って、見つけた瞬間にメールを送りました。実際に入居し始めたのが4月、今年度始まってからすぐなんですけど。そして来たらGakkiさんなんかいたっていう(笑)。
2023.08.19|筆者撮影|オープンアトリエ当日の入り口
半田 : なかなか音が出せる作業環境を都内に見つけるのは難しいですよね。
Gakki : 自分で発見された、っていうのが凄いびっくりしていて、まさに深掘るというか。私は元々、キンミライガッキの活動が所属しているアートユニットというか集団がいて、C–DEPOTっていう集団があるんですけれども、そことの繋がりで貸しアトリエの情報をいただく機会があったんですね。そういう経由だったんですけれども、まさに私も結構いろんなアトリエを転々としてきて、本当に都内に工具を含めて音を出せる環境というのは本当に少なくて、ずっと探してたんですけれども、それを自分で、卒業後すぐ発見されたというのは…流石のdigり力というか(笑)
半田 : 二人の出会いはこの場所にあったんですね。
曾原 : そうですね。
2人をつなげる音楽の趣味
半田 : では、そんな二人が普段どんなことを話されているのか伺っても良いですか?僕らはバックボーンが違う人と話す時、ちょっとトークテーマに困ってしまったりもするんですけど、普段同じアトリエで活動されているような状態で、どんなことをお話しされているのかなというのがすごく気になります。
Gakki : 音楽…
曾原 : まぁ…一番でかいのが音楽。というか、僕は全然音楽の世界に入り浸ってきた人間じゃないんですけど、多分周りの人間よりも音楽に対しての関心はあって。昔からピアノやっていたこともあって、高校に入学した瞬間に実家を離れてピアノのない生活が始まって、それでもどうしてもピアノが弾きたいなって思った時に、その欲求を満たすためにYOUTUBEでジャズの音楽理論を勉強したりして(笑)。それである程度そのコード進行であったり、スケールの話っていうのは理解できるようになって。大学時代はそのジャズの系譜を受け継いでヒップホップを聴くようになって、それで今に至るんですけど。今年ここに入居し始めてからGakkiさんと出会って何が一番びっくりしたかっていうと、結構音楽のテリトリーが同じというか(笑)。Gakkiさんは一応メディアアーティストという肩書きを持っていて、ネオな楽器を作る人って聞いた時に、テクノとか電子音楽系が好きなんじゃないかなという風に思っていたんですけど、蓋を開けてみると、実はヒップホップめっちゃ詳しかった(笑)。なので、アトリエで活動してる時は、私たち二人の作業用BGMががっちりハマるんですよね。
半田 : お2人の共通の趣味があったんですね。
Gakki : ちょうどここも後ろに移っているところに、レコードが回せるターンテーブルが2台あったりするんですけれども、レコードも結構クラシックヒップホップとかジャジーなものもあったりとか。音楽の領域の話が合うってやっぱり凄く話しやすいし、ありがたいですよね。やっぱり音楽性の違いとかはありますから(笑)
曾原 : Gakkiさんが音楽界隈で活動しているっていうのもあって、自分は全然音楽の知り合いが全然いなかったんですけど、それをきっかけにちょっとDJを始めることになって。家の近くにあるMUSIC&BAR enabっていう小さな箱でやらせてもらってるんですけど、今ちょうどこの撮影が終わった後にDJで出演します(笑)
半田 : 精力的に色んな活動をされているのが、また結び付いてくるんですね。
音楽の話題で意気投合する仲が良さそうな二人
オープンアトリエ開催の経緯に迫る
半田 : ところで、オープンアトリエについて聞かせていただこうかなと思います。僕も当日、オープンアトリエについてはスタッフとして携わらせていただいたんですけど、より深掘りさせていただこうと思います。僕は途中からチームに加わったので、あまり経緯については知らなくて、お二人がイベントを開催するに至った経緯を教えていただけますか。
Gakki : 多分、各々目論見とかはあった思うんです。自分の方でこれからやろうと思っていたのは、まずここに移動してきて、そのお披露目とご挨拶をしたかったっていうのが大きいですね。実はこの空間、今ここが地下室でそれこそ音を出したり、実験ができる空間なんですけれども、上はまんま工場みたくなっているんですね。こういう特殊な立地のところを運を良くお借りすることができて。となった時に、これから広がっていく活動に対して、ちょっとジャブを打ちたかったというか。「これからこういうことができると思いますのでよろしくお願いします。」みたいな御挨拶をしたかったんですね。
曾原 : 僕も入居して、このId108は実際Gakkiさんが管理人という形で、僕はそこに入居するっていう形なんですけど。色々提案をしてくださって、個人の展示っていうのもやりたいなって。ちょうどDJも始めて、音楽イベントとかやってみたい。自分で実際にオーガナイザーとしてやってみたい、っていうのがあって。Gakkiさんがそのオープンアトリエをしたいっていう話を入居した時からずっとしてたんですけど、そこに肉付けしていくって言うか、自分の妄想が凄い膨らんでしまって、僕の要望っていうのが結構反映してもらえたという(笑)
Gakki : メチャメチャありがたかったですね…
曾原 : で、すごく面白かったのが、Gakkiさんと僕の人間性が徐々に見えてきたんです。今回のオープンアトリエがきっかけで。
Gakki : (笑)
曾原 : 何て言うか、Gakkiさんはやりくりするのが凄いうまいなって思っていて。僕は結構衝動的に行動してしまうタイプなんですけど、なのでオープンアトリエやるぞってなった時に、なら絶対この日にやるって先に決めて準備してた方がいいなって思ったし、どんどんアイデアも出てきて、出てきたことは取り敢えずやるっていう姿勢でいたんですけど。久しぶりにそういうやり方をしてると、うまくいかなかった時にすごく焦ったりとかしちゃうんですけど、Gakkiさんの頭は凄く冷静なところがあって。僕が走り過ぎてしまった時に、客観的な視点を持たせてくれるようなサポートがあって。逆に言ったら、これはGakkiさんが言ってくれたんですけど、僕自身が結構モチベーターになってるみたいな。
Gakki : うんうん(笑)
曾原 : 渋谷に行った時、歩きながらこう言ってくれて僕はそれが心に染みたというか(笑)。
Gakki : そのことを僕も話そうかなと思っていたんですけど、相方を褒めようと思って(笑)。まさに僕もわりと自分もその衝動的に最初スタートすることはあるんですけど、途中で頭の調整とかブレーキをかけがちなところがあるんですね。そんなところで、やっぱりネガティブになってしまったりとか、ちょっと狭く見ちゃう時もあるんですけれども、そうなりそうな時に背中を押してもらえたりとか。特に自分に足りない部分、今回でいうとグラフィックのデザインの部分であるとか、見た目に関する美しさとかはかなり曾原さんのおかげで形になったなと思っていて。まだ何か色々やれることはあった展示だと思うんですけれども、すごくわくわくできた感じが嬉しかったですね。
半田 : お互いがお互いを補い合ったり、時には二人の力が合わさって、大きな爆発が起きたりっていう感じで、この対談を通して二人のラブラブ具合が見えてきたような感じがしています。
曾原, Gakki : (照)
またしても仲の良さそうな二人
二人三脚で歩んだイベント準備期間
半田 : 準備期間とかはどんなことがありましたか。オープンアトリエはいろんな行程だったり、いろんな展示だったり、いろんなパフォーマンスだったり、結構僕が学生ながら見ていても、相当な準備をしてきたんじゃないかなっていうのが見て取れたんですけれども。
曾原 : さっき言ったような、僕が走り過ぎてGakkiさんがブレーキかけてくれたみたいなところで言うと、何人呼ぶかっていう数字的な目標の話はGakkiさんと僕の間でズレがあったかなと思っていて、この物件のアドバイザーとしていろいろアドバイスをくれた伊部さんという方の意見も結構Gakkiさんに近いものがあって。僕はレセプションパーティーに結構多くの人数を呼びたかったんです。でもキャパシティー的に大丈夫かとか、近隣住宅街なんで、近隣の住民に迷惑掛からないか、っていうところですごい凄い揉めたというか。
Gakki : 熱い議論がありましたね…(苦笑)
曾原 : ただ、そこはやっぱりGakkiさんと伊部さんのアドバイスだっだからこそ、客観的に自分がやっていることを見つめられたというか、結果的に結構な人数きましたけどね(笑)
Gakki : いいバランスに落ち着いたなっていうか。実はちょっと立場上、どうしても止めなきゃいけなくて、実はつらかったんですけど、今度は僕も大勢を呼びたかったので、一緒になってワイワイしたかったのですが…そういうところで僕がブレーキになりそうなことを言いつつも、ずっと言ってくれたことですごくありがたくて。基本的に結構モノ作りをしてることもあって、やっぱり安全性とかを第1に考えちゃうんですね。何か壊れた時とか、事故になった時の、っていうこう逆算しがちなのに、それでちょっとビビリがちなところがあるんですけれども、そこを何度も見直して、それでも最大限いけるようにだとかを考えられましたし、あと人がらみのところでいうとあれですよね、結構いろんな人にお世話になっていて、いろんなものを今回の実施にあたって譲っていただいたり、貸していただいたりとか、機材であったりとか、それこそ今お話に上がったハウスメイトの伊部さんやオーナーの方々もかなり協力的になってくれていて、僕が当初ビビっていたよりも人をを呼べた印象がありますし、この先もっとみたいなことは考えられそうな感じになったかなという。
半田 : 基準になるようなイベントが理想と現実の間で出来上がっていたっていう感じだったのですね。
モデレーターの半田洋久|今回のレセプションパーティにて、スタッフを務めた
次の記事に続く → 【イベントアフタートーク #2】イベントの裏側、そして赤羽という舞台について語る。【Gakki3×曾原翔太郎】
著 : 半田洋久